-ガンマ線完全可視化により放射線利用の安全評価が正確に-

谷森達 本研究科物理学・宇宙物理学専攻教授、高田淳史 同助教らの研究グループは、ガンマ線を幾何光学に基づき定量的に画像化する手法を発見し、福島地域におけるガンマ線観測でその実証に成功しました。原理提案から実用化手法まで通して提示した成果です。今後、ガンマ線完全可視化により、放射線利用の安全評価がより精緻に行われることが期待されます。

 

本研究成果は、2017年2月3日午後7時に英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

左から、谷森教授、高田助教

 本研究成果により、放射線発見以来しっかり見ることが出来なかったガンマ線を、光で物を見るように捉える原理がわかり、実用化の第一歩も踏み出せました。今後この原理・手法により、宇宙観測や粒子物理の寄与ばかりでなく、原子力関係施設の安全管理の大幅な改善、今回の福島の事故のような放射線事故の迅速な対応も可能になります。また医療分野での新しい放射線利用の可能性も出てきます。この研究から社会での放射線の安全・安心な利用が促進され、放射線と社会の新たな関係が築けたらと願っています。

概要

宇宙で元素を作り出す天体現象の主な候補に超新星爆発がありますが、観測による証拠はまだ十分ではありません。元素合成時に放射される核ガンマ線の検出が最も信頼できる証拠になると考えられていますが、これまでに2回しか観測されておらず、21世紀になっても研究は進展していません。ガンマ線の画像化法が未熟なためだと考えられます。

 

そこで本研究グループは、宇宙のガンマ線放射天体の謎を解明するため、ガンマ線と物質の相互作用を測定することで、一般的なカメラが光を捉えるのと同じようにガンマ線を捉える、ガンマ線カメラElectron-Tracking Compton Camera(ETCC)を世界に先駆け開発・実証しました。開発したカメラの画像化法を用いると、光学カメラで光を定量的に画像化するのと同様にガンマ線の定量的な画像化が可能です。

 

このカメラを用いて福島の汚染地域の撮像試験を行ったところ、画像から地表面のセシウム量(ベクレル値)の分布を定量的に示すことができました。この放射線強度からIAEAの基準に従って求めた地上の線量分布(μSv/h)は、撮像実験とは別に測定した線量計の結果と一致していました。

図:測定された除染区域の線量マップおよび各点のスペクトル。図中の数字は既存線量計での測定線
 

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